写真:日本、京都 (Photo: Kyoto, Japan)
一人になりたくて朝の京都の町を歩いた
歩き回った末に西本願寺にたどり着き
誰もいない境内に足を踏み入れる
街中にあって人っ子一人いないお寺
本堂が開放されていたので
畳の香りがする静かなお堂に入り
仏様と向かい合って正座する
きらびやかなお堂で聞こえるのは
風に揺られて擦りあう木々
さえずる鳥の声
外を行きかう車の音と
自分の呼吸する音だけ
穏やかな仏様の顔を見つめていると
ふと涙が流れた
何が悲しいわけでなく
ただ涙が流れた
大人になって泣くことが少なくなった
悲しいことや苦しいことがないわけじゃなく
泣くことを我慢することを覚えたからだ
でも、大人になっても泣きたい時だってある
一番弱い自分に戻りたくなる時だってある
子供のときみたいに素直に感情を表したい時だってある
誰もいないお堂の中で
仏様が優しく見つめてくれる中で
あたしは子供に戻ったのかもしれない
我慢していたいろんなものを
一時だけ肩から下ろして
素直になりたかったのかもしれない
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